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2×2行列であそぶ(構成しよう)

行列がなくなってしまった!

行列が高校数学の指導要領からはずれてしまいましたね。

行列は大学に入ったら必ず使うし、とっても役に立つと思うんですが。

代わりに複素平面に関する内容がもう少し増えるみたいです。

不思議な行列

次のような{2\times 2}行列を考えます。

\begin{pmatrix} a&-b \\b&a \end{pmatrix}\qquad a,b\in\mathbb{R}

さて、この行列にはどのような性質があるでしょうか。

まず試みにa=1,b=0とした場合を考えてみましょう。

つまりこれはこのような行列です。

\begin{pmatrix} 1&0 \\0&1 \end{pmatrix}

ご覧のとおり二次の単位行列となります。

ここで、この行列をEと置いておきましょう。

どのような行列Aに対しても

EA=AE=A

が成り立ちます。

積の演算に関してこのような性質を満たすような元を単位元といいます。

なのでEは行列の積の演算における単位元となります。

実際、\begin{pmatrix} a&-b \\b&a \end{pmatrix} (a,b\in\mathbb{R})に対して

 \begin{eqnarray} 
                       \begin{pmatrix} a&-b \\b&a \end{pmatrix}\begin{pmatrix}1&0\\0&1\end{pmatrix}
                     &=&\begin{pmatrix} a\times 1+b\times 0&a\times 0+(-b)\times1 \\ b\times 1+a\times 0&a\times 0+b\times 1 \end{pmatrix}\\
&=& \begin{pmatrix} a&-b \\b&a \end{pmatrix}
    \end{eqnarray}

 \begin{eqnarray} 
                      \begin{pmatrix}1&0\\0&1\end{pmatrix} \begin{pmatrix} a&-b \\b&a \end{pmatrix}
                     &=&\begin{pmatrix} 1\times a+0\times (-b)&1\times (-b)+0\times a \\ 0\times a+1\times b&0\times (-b)+1\times a \end{pmatrix}\\
&=& \begin{pmatrix} a&-b \\b&a \end{pmatrix}
      \end{eqnarray}

となっているので、その性質が成り立っていることがわかります。


では今度は逆にa=0,b=1としてみましょう。

これは次のような行列です。

\begin{pmatrix} 0&-1 \\1&0 \end{pmatrix}

この行列の二乗を考えるととても面白い性質が観察できます。

実際にやってみましょう。

 \begin{eqnarray} 
                      \begin{pmatrix}0&-1\\1&0\end{pmatrix} \begin{pmatrix} 0&-1 \\1&0 \end{pmatrix}
                     &=&\begin{pmatrix} 0\times 0+(-1)\times 1&0\times (-1)+(-1)\times 0 \\ 1\times 0+0\times 1&1\times (-1)+0\times 0 \end{pmatrix}\\
&=&\begin{pmatrix}-1&0\\0&-1\end{pmatrix}\\
&=&-E
\end{eqnarray}

いまI=\begin{pmatrix}0&-1\\1&0\end{pmatrix}とおけば、

I^2=-E


が成り立っています。

つまりIを二乗すると行列の積の単位元E-1倍になるのです。

さらに、E,Iを使うと、任意のA=\begin{pmatrix} a&-b \\b&a \end{pmatrix} (a,b\in\mathbb{R})に対して

次のような分解を考えることができます。

 \begin{eqnarray} 
                       A=\begin{pmatrix} a&-b \\b&a \end{pmatrix}&=&
\begin{pmatrix} a&0 \\0&a \end{pmatrix}+\begin{pmatrix} 0&-b \\b&0 \end{pmatrix}\\&=&
a \begin{pmatrix} 1&0 \\0&1 \end{pmatrix}+b \begin{pmatrix} 0&-1 \\1&0 \end{pmatrix}\\&=&aE+bI
      \end{eqnarray}

この分解を利用してA=\begin{pmatrix} a&-b \\b&a \end{pmatrix},B=\begin{pmatrix} c&-d \\d&c \end{pmatrix} (a,b,c,d\in\mathbb{R})の積を考えると


\begin{eqnarray}
AB=\begin{pmatrix} a&-b \\b&a \end{pmatrix}\begin{pmatrix} c&-d \\d&c \end{pmatrix}
&=&(aE+bI)(cE+dI)\\
&=&acE^2+adEI+bcIE+bdI^2\\
&=&acE+adI+bcI+bd(-E)(\because I^2=-E)\\
&=&(ac-bd)E+(ad+bc)I
\end{eqnarray}

お気づきの方もいると思いますがこの行列は複素数と性質がとてもよく似ています。

複素数を構成する

つまり、次のような対応があるということです。

\begin{eqnarray}
\\
E &\longleftrightarrow& 1\\
\\
I &\longleftrightarrow& i\\
\\
A &\longleftrightarrow& a+bi
\\
\end{eqnarray}

以上の議論から複素数の定義を行列によって行うことができるということがわかります。


そうすればi^2=-1という一見受け入れがたい定義が高校生を

苦しめることなく、複素数により親しめるようになるかもしれません。

それにしても行列はとても面白いのに指導要領からなくなってしまったのはとても惜しいことです。