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行列の正則関数(メモ)

前回の記事
行列の指数関数について(メモ) - MAEA2’s diary

の\( (11) \)式からわかるように、行列の指数関数の性質について調べるには、各ジョルダンブロックの

指数関数について調べればよいことがわかりました。

行列の指数関数は、\(\exp(z)\)の展開式から定義しました。

これはべき級数の形をしています。

そこで一般のべき級数についても前回の記事と同じ結果が導けるのでそれを示しておきます。

いま、複素べき級数

\[
\begin{align}
f(z)=\sum_{n=0}^\infty a_nz^n\; (z\in\mathbb{C})
\end{align}
\]

に対して、行列べき級数

\[
\begin{align}
f(A)=\sum_{n=0}^\infty a_nA^n\; (A\in M_n(\mathbb{C}))
\end{align}
\]

で定義します。

これに対してもジョルダン標準形による分解ができて, \( P:\text{正則} \)があって

\[
\begin{align}
\nonumber f(A)&=P\left(\sum_{n=0}^\infty a_n\left(\bigoplus_{1\leq i\leq r,1\leq j \leq s_i}J(\lambda_i,j)\right)^n \right) P^{-1}\\
&=P\bigoplus_{1\leq i\leq r,1\leq j \leq s_i}\sum_{n=0}^\infty a_n\left(J(\lambda_i,j)\right)^n P^{-1}\\
&=P\left(\bigoplus_{1\leq i\leq r,1\leq j \leq s_i}f\left(J(\lambda_i,j)\right) \right) P^{-1}
\end{align}
\]

よって\(f(A)\)がどうなるかを調べたかったら各\(f\left(J(\lambda_i,j)\right) \)を調べればよいことがわかります。

いま\( J(0,m)=J_m \)と書くことにすると、\(J_m\)は\(m\)次のべき零行列となっていることと

\( J(\lambda_i,j)=\lambda_i E+J_j\)と分解できることと二項定理から

\[
\begin{align}
&\left( J(\lambda_i,j)\right)^n=\sum_{k=0}^{j-1}\frac{n_k}{k!}{\lambda_i}^{n-k}J_j^k
\: \left(\text{ただし} n_k=\frac{n!}{(n-k)!}\right)
\end{align}
\]

が成り立ちます。
\((4)\)を\( (3) \)に代入して


\[
\begin{align}
&P\left(\bigoplus_{1\leq i\leq r,1\leq j \leq s_i}\sum_{n=0}^\infty a_n\left(J(\lambda_i,j)\right)^n\right)P^{-1} \\
=&P\left(\bigoplus_{1\leq i\leq r,1\leq j \leq s_i}\sum_{n=0}^\infty a_n \left( \sum_{k=0}^{j-1}\frac{n_j}{k!}{\lambda_i}^{n-k}J_j^k\right)\right)P^{-1}\\
=&P\left(\bigoplus_{1\leq i\leq r,1\leq j \leq s_i}\sum_{k=0}^{j-1}\left(\sum_{n=0}^\infty a_n n_j{\lambda_i}^{n-k}\right)\frac{1}{k!}J_j^k\right)P^{-1}
\end{align}
\]

ここで

\[
\begin{align}
\sum_{n=0}^\infty a_n n_j{\lambda_i}^{n-k}=f^{(k)}(\lambda_i)
\end{align}
\]

なので\((9)\)を\((8)\)に代入して

\[
\begin{align}
P\left(\bigoplus_{1\leq i\leq r,1\leq j \leq s_i}\sum_{k=0}^{j-1}f^{(k)}(\lambda_i)\frac{1}{k!}J_j^k\right)P^{-1}
\end{align}
\]

よって、このようにして定義した行列のべき級数は、元の複素べき級数\(f(z)\)の収束半径に依存することが
わかりました。

このようにして定義される関数を行列の正則関数といいます。